きょうは 父の命日なり
あしたは 母の命日なり
あさっては 息子の命日なり
しあさっては 祖父の命日なり
やなあさっては 祖母の命日なり
春は 息子の命日なり
夏は 父の命日なり
秋は 祖父と祖母の命日なり
冬は 母の命日なり
過去は 御先祖様の命日なり
現在は 父と母そして息子の命日なり
未来は 私と私の妻の命日なり
毎年が 命日なり
毎日が 命日なり
祥月命日なり
きょうは 父の命日なり
あしたは 母の命日なり
あさっては 息子の命日なり
しあさっては 祖父の命日なり
やなあさっては 祖母の命日なり
春は 息子の命日なり
夏は 父の命日なり
秋は 祖父と祖母の命日なり
冬は 母の命日なり
過去は 御先祖様の命日なり
現在は 父と母そして息子の命日なり
未来は 私と私の妻の命日なり
毎年が 命日なり
毎日が 命日なり
祥月命日なり
おやじ
空から見ていると
元気そうじゃないか
おれが生きるために
死を選んだのは
間違いじゃなかったよ
だから安心して
養生して
長生きしてくれよ
おやじ
それがおれへの
供養になるんだから
おやじ
空から見ていると
酒の飲みすぎじゃないのか
おれはおれで
元気で死を生きているから
心配しないで
おやじはおやじの
生を全うしてくれよ
それではまた連絡するから
あ、そうそう
おれの一周忌ありがとう
母さんによろしくいってくれ
死ぬなよ
晴れた夏の日に
死ぬなよ
雨の降る秋の日に
死ぬなよ
雪の降る冬の日に
死ぬなよ
曇りの春の日に
生きるためとはいえ
あなたは何故、
行年30歳
母親の古希の祝いの年に
両親に先立ち
自らあの世に行ってしまったのだ
息子よ
あの世では、死ぬなよ
春になって
鳥が土をついばむと
土から芽が出て
夏には花が咲いた
夏になって
蝶が花にとまると
花が散って
秋には実がなった
秋になって
鳥が実を食べると
実を成らした草木が
冬には枯れた
冬になって
蝶が舞う日に
鳥が飛び去り
春には私がいなくなった
祖父母が、両親が
兄弟姉妹が、友人知人が
そして、有縁無縁の
生きとして生けるものすべてが
嘆き悲しむのを知っていながらも
あなたが死を選んだのは
あなた自身が生きるためには
それしかなかったからだ
法名 釈永遠
没 ○年○月○日
俗名 ○○○○(仮名) 行年○○歳
あなたの自死を生かすために
私にできる供養と言えば
故人の冥福を祈りながら
そして、有縁無縁の
生きとして生けるものすべてが
天命を全うするよう
祈るしかない
年を取って
物忘れしないような
年寄りは
年寄りではない
年を取って
物も欲も忘れ
自分が誰かも忘れて
年寄りになるのである
年寄りは
何にでもありがとう
ありがとうと言いながら
悟りを開いていくのである
年寄りは
その人の人生にふさわしい
悟りの風景の中で
生きているのだ
雪の結晶が
いくつか結びついた
雪が降ってきた
庭先をうっすらと
白く染めて
雪が降り止んだ
それでは
時節柄
御自愛ください
一通の手紙を
読み終わると
雪は溶けてしまった
太郎の
屋根に雪が
降り積もる夜
白ずくめの姿で
若い雪女が
太郎の家にやってきた
太郎が
雪女を抱いて
翌日、目を覚ますと
太郎の母が
梁に首をつって
死んでいた
二郎の
屋根に雪が
降り積もる夜
白ずくめの姿で
老いた雪女が
二郎の家にやってきた
二郎が
雪女に抱かれて
翌日、目を覚ますと
二郎の嫁が
梁に首をつって
死んでいた
青空が
目に染みるから
泣いているのか
白鳥よ
あなたの
こぼした涙で
湖面が濡れて
水が泣いている
家族そろって
無事に渡ってきたのに
何がそんなに
悲しいのだ
青空が
目に染みるから
悲しいのか
白鳥よ
わたしが
泣いているのは
あなたの羽が
水に濡れているからだ
とことこと
マッチ箱のような
列車が走っていく
車窓から見える
山あいの紅葉を見ながら
初恋の人を思い出したら
運転手も車掌もいない
列車は私一人を乗せたまま
トンネルに入った
窓ガラスに
映し出された翁は
どこから乗ったのだろう
トンネルを抜けると
列車は駅に着いた
私は駅に降り立った
列車は媼を乗せると
地図にない線路の上を
とことこ走りだした
翁と媼を乗せた
列車は鉄橋を渡りながら
脱線した
谷底に消えていく
列車を見送りながら
私は真っ赤になった
by 豊崎義明の豊さん
雑草